大根と鶏肉の治部煮:早起きは三文の徳
久しぶりにこの寒い風に当たってみたくなって、薄暗い夜明けと共に走りに出ました。立石公園に着く頃、日の出を拝められるような期待もあって、真っ白い息がむしろ新鮮で、嬉しささえ感じていました。
前に、マイナス13度くらいの気温の朝に走った時に、瞼の裏側で目玉の冷たさを感じたという話、覚えています。目を開けて走っていると目玉が冷たくなって、目を閉じた時に、瞼の裏側が寒いと驚くのです。その冷たさはもう懲り懲りなので、保護のためにランニング用のサングラスを掛けて行ったのが、この薄暗さに自分でも滑稽でしたが、大正解。冷たさを凌ぐには丁度良かったです。
最後の急坂に差し掛かった頃、道の前方に人がいます。近づくと、かっこいい帽子をかぶった初老の紳士風です。ドキッ、なんでこんな時間にお年寄りがいるのだろうかと、話しかけられると怖いので、この人物をやり過ごそうとした瞬間、「あの、ちょっとすみません。お伺いしてもよろしいですか。」と、丁寧に呼び止められ、瞬間にその優しい物腰にこの人は大丈夫と思えて、緊張が解れました。手引きをされた方へ近づくと「すみません、あの遠くに光っている、一番奥の白い山は何という山かご存知ですか?」と、片手に三脚を持っているのに気づき、共感をもてる相手だと直感しました。私の見立てでは、あれは乗鞍岳です。が、公園から見る景色と全く違うので、少し半信半疑だと伝えて、公園の見晴台に案内板があることを伝えると、「朝飯を食べてから実は行くところなんですけど、朝日があまりに綺麗なので、つい、見に出てきたんですよ。」と屈託のない話し方で、私も一安心。それからしばらく、日の出前の朝日に照らされて、赤く金属的に光る遠くの雪山を眺めながら、二人でなんとなく間を繋ぐだけのような会話をポツリポツリしながら、その場にそうしていました。一頻り眺めて満足すると、我に返ったように「あ、すみません。足止めさせてしまいましたね。」とかえって恐縮してしまうような丁寧な言い回しで、私を見送ってくれました。
この田舎に住む様になってから、東京の言葉で丁寧な扱いを受けたのは何年ぶり?私にとっては心地よく、大変安心できる懐かしい感じのするやり取りでした。「早起きは三文の徳」、ぅっしっしと軽やかにジョギングに戻りました。
さて寒い日には、体の芯まで温まるとろみがついた治部煮などが嬉しいです。
治部煮は、金沢の伝統料理で、本来は鴨を焼いて鍋にしたものだったそうですが、今では、鴨か鶏肉に粉をまぶして、季節の野菜やお麩などを一緒に煮込んだお料理に移り変わったそうです。私は、早く火が通る蕪で作ることが多いのですが、母がここに来ていた時の置き土産の大根があったのを思い出し、お米のとぎ汁で下茹でして、鶏肉で作りました。
そうそう、大根の面取りのことですが、気になっていたのは、見映えを問題にするかしないかの事です。米のとぎ汁で下茹でした時点で、切り口が煮崩れするということも無く、私の場合、最後まで煮崩れしないので、今まであまり面取りなどはしませんでした。これというのも、料理でもかなり合理主義で、必要最低限が満たされていれば、それ以上の手を加えたいと思わないからなのです。が、面取りをすると優しい感じがしますよね。どうでしょう。角があって、カチンとした感じよりも、丸みを帯びた柔和な感じが、煮物にはとてもあっていると感じます。
お米を研ぐ時に出る濃いとぎ汁を取っておいて、冷たい最初の時から大根を下茹でします。沸騰したら火を弱めて5分ほど茹でて、火を止めたらそのまま冷まします。大根の独特の苦味が取れて、まろやかになります。次に、洗ってから半月に切って、鰹出汁で柔らかく煮ます。ここで鰹出汁の旨味がしっかり入っていると、後の味付けが生きてきます。大根に味がついたら下味を付けた鶏肉に片栗粉をまぶして加え、鶏肉に火が通ったら葱を散らして出来上がりです。この時期の長葱を使うときは、少し煮込むと甘味が出ます。
材料
- 大根・・600g(2.5cmの輪切り6個)
- 米のとぎ汁・・2ℓ
- 鰹出汁・・600cc
- 鶏もも肉・・350g(1枚)
- 片栗粉・・大さじ1
- 長葱・・10cm
- 醤油・・大さじ2
- 酒・・1/2カップ
- 味醂・・大さじ2
- 砂糖・・小さじ2
- 塩・・少々
作り方
- 大根を輪切りにして、面取りをしてから米のとぎ汁で下茹でする。(沸騰してから5分茹でて火を止めてそのまま冷ます)
- 鶏肉は一口大に切って、酒と塩(分量外)各小さじ1で下味を付けておく。
- 1の大根を半分に切って、鰹出汁と一緒に柔らかく煮る。
- 砂糖、酒、醤油を順に加えて味付けし、大根に味が染みこんだら2の鶏肉に片栗粉をまぶして加え、鶏肉に火が通るまで煮込む。
- 最後に味醂を加えて味を見て、塩で加減する。
- 味が調ったら葱の小口切りを加えて一煮立ちさせて出来上がり♪
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