里芋と半熟卵の炒め煮:卵と牛乳はいつでも置いとけ
今年は、長男の卒業と大学の入学の事があって、引越しの手配やら何やらの雑事と重なり、娘の誕生日をうっかりしていました。翌日になって思い出していた矢先に、丁度娘から「22歳の誕生日を迎えました・・・中略、産んでくれてありがとう」とメールがは入りました。自分の娘とは思えないような大人っぽいその言い回しに思わず、「え、どちら様?」と思ってしまいました。離れていると、日々の成長を本人から感じることがないので、改まった感じが、オィー我が子かよと本当に疑ってしまいます。私が22歳の頃は、間違っても親にそんな事言えませんでした。
私の世代は、戦後の民主主義が染み付いているせいか、その良い面とは別に、戦前戦中を生き抜いてきた大人達のことが変(軍隊式の上下関係的な封建社会的な)に見えてもいました。ですから、親も含めて「言いなりにはなりたくない」という気持ちが働くのか、大人を斜に構えて見ている様な感じがあって、でも、子どもなので「それは間違っている」のような自己否定もかなり強くあり、端的に言うと、生まれてきてよかったなどと思いませんでした。高度成長期の時代では、自己をアピールして、表にドーンと出ないと認めてもらえないような競走の激しい時代でもあって、落ちこぼれてもなんとか孤独に這い上がってきた姿が今ですからね。自分という存在を捉えにくかったのだと思います。見えるのは敗北や妥協のようなものですから、生まれてきてよかったというよりも、できることなら生まれ変わりたいと思っていたような。
素直に「生んでくれてありがとう」と言えるかどうかよりも、娘が自分の誕生日にそう思えるということは、少なくとも今は、自分を否定したり悲観的に観てはいないのだと感じるので、それが何よりよいことだと思います。私などよりは、はるかに幸せに育っていると感じます。
さて、我が家の里芋君(岐阜の友人から頂いたもの)、風邪を召されたようです。里芋やバナナ、さつま芋などを凍りつくような冷たい場所に置いておくと、「風邪を引く」と、この辺では言います。発泡スチロールの箱等に入れて冬は保管するのが良い方法なのですが、うっかりしてしまいました。多分一度くらい凍ってしまったのでしょうか、水分が抜けた感じがして、皮を剥くと表面が赤く変色していす。思ったよりもそれが深く、結局厚く皮を剥いたので影が薄くなりました。みずみずしい里芋でしたら、皮をつけたまま5分ほど茹でて冷水に取ると、面白いようにきれいに剥けるのですが、この里芋はダメでした。で、急遽卵を半熟に茹でて、鶏肉と一緒にサッと煮たというお料理が出来ました。このような時に卵って助かります。
卵といえば、前にあることをきっかけに、香川綾という人のことを調べた時に分かった事でもあるのですが、それは戦後の日本の飢餓状態にあった子ども達を何とか救おうという願いの元に、卵と牛乳を第一群に持ってきた人です(四群点数法)。私世代は、小学校の給食で毎日出た脱脂粉乳を嫌い、二度とあんなものは飲まないという人が多くいますが、あれが救ってくれたのです。あれが当時の日本の平和主義を象徴する食だったのです。バター品薄の危機はあっても、牛乳や卵の危機は、今は日本には無いはずです。完全栄養食品の牛乳や卵が、この世から姿を消すような国家になったら、それは終わりを意味するような歴史もかつてあったのです。
■参考サイト
栄養をきちんと摂る for dummies☛
香川綾さんが立役者となった背景など☛
栄養教諭の恐怖☛
どの家庭にも、卵だけはいつでもあるのではないでしょうか。卵の定着は、料理からも感じます。卵ほどメインでもサブでもその性質が多岐にわたって重宝されるものは無いのではないかと思います。里芋がしょぼいから、卵を嵩増しに加えたような動機でも、立派に一品となるのですから。
黄身だけが半熟のゆで卵を作ったら、直ぐに冷水に浸して完全に芯まで冷まします。殻を剥いて、火が通った里芋と一緒に味付けし、最後にそぎ切りにして塩と酒で下味を付けた胸肉に片栗粉をまぶして炒め合せます。この片栗粉のとろみで出汁の効いたタレが全体に絡むので嬉しいです。
鰹出汁を取るときは、絶対に鰹節をケチらない事。秋山千代さんも言っていますが、これをケチって料理に使っても美味しくないです。出汁は、大きなお鍋にお湯を沸かして、一つかみ単位で沢山入れて作るものです。
材料
- 卵・・6個
- 里芋・・200g
- 鶏胸肉・・1枚(330g)
- 片栗粉・・大さじ1
- 鰹出汁・・カップ1.5
- 醤油・・大さじ2
- 味醂・・大さじ2
- 酒・・大さじ2
- 細葱・・適宜
胸肉の下味つけ用
- 酒・・大さじ1
- 塩・・小さじ1/2
作り方
- お湯をたっぷり沸かし、やっと指が入るくらいの温度になったら火を消して、卵を入れる。
- 5分後、卵を一度取り出して、残ったお湯をたぎらせたら卵を戻し、中火で5分茹でた後、直ぐに冷水で冷ます。(失敗のない黄身だけ半熟にする方法☛)
- 胸肉を一口大のそぎ切りにして、ボールで下味を付けておく。
- 里芋の皮を剥く。(通常は、皮のまま5分茹でて冷水で冷やしてから皮を剥くと綺麗に剥き易い)
- 鍋に薄く油を引いて里芋を炒め、表面がうっすら透き通ってきたら出汁を加え、蓋をして完全に火が通るまで煮る。
- 竹串を刺して、スッと通ったら殻を剥いた1の卵を加えて醤油、味醂、酒を加え5~6分煮る。
- 2の胸肉に片栗粉をまぶして5に加え、鶏肉に火が通ったら小口に切った細葱を散らして出来上がり♪
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コメント
ちょっと前に作って、ちゃんと半熟卵になるんだ、と、感動しました。スロークッカーも結構よだれたらしながら拝見させていただいております。
ああ、このくらいしか言葉が出てきません。
投稿: ulala | 2009-03-10 18:35
ulalaさん、こんばんは。
エントリーを読ませてもらって、近頃感じていなかった嬉しい気持ちというのを呼び起こしていました。なんだか、私がここに書いていることが、世代を超えない範囲で(やっぱり^^;)伝わっているのだと思えました。ありがとう。
段々世知辛い世の中に移行していくような現実と向き合いながら日々を送るということが腹に落ちないのですが、同病相憐れむというか、袖振り合うご縁とでもいいますか。長いものに巻かれながらも自分の暮らしは自分で背負っていくものだと思っています。
卵と牛乳は置いとけって、いろいろな意味があるとしみじみ思います。
投稿: ゴッドマー | 2009-03-10 19:41