2009-02-11

「テケレツのオッパッパ」(豚こま切れと玉葱のカツレツ風):秋山千代さんを偲んで:「カツ代が聞く、九十一歳現役台所」より

秋山千代いわく「私しゃ、呼ばないからね。勝手に来るんじゃないよ。」母が没して10年になる。」
(秋山 祐徳太子 『ブリキ男』)

お元気でいらっしゃるのかと思っていた・・・秋山千代さん。

ブリキ男

千代さんのご子息、秋山祐徳太子さん、といっても1935年生まれのおじいちゃんですが(ブリキアートの芸術家)、書き下ろし自伝のあとがきにこう書いてあったのです。 元々、1996年が初版だった千代さんの料理の本が欲しかったのですが、祐徳さんのことをWikipediaで知って、親子を合わせてみたかったのです。その初版をAmazonから入手しましたが、この本のことを知ったと同時に亡くなったことも知るとは。
千代さんの手作りのご飯を食べながら、食の話を聞いてはメモを取って、AmazonNetShop千代さんとカツ代さんとのおしゃべりに、時々祐徳さんが茶茶を入れるような形で対談風に書きまとめてあるのが、「カツ代が聞く、九十一歳現役台所」です。訪問の度に飛び出す千代さんの料理の話や料理が生まれた経緯、その当時の背景などの話が面白く、チャーミングな話し方をされる方です。私は、このような日記を書いていますので、料理の話や書籍に飛び着きますし、また誰にでもそう思われているのも然りですが、紹介してい頂いた時に、直ぐに読みたいと思ったのは、今では話を聞きたくても聴けない昔話に興味があったからです。ですから、この本が会話方式になっていたのが嬉しかったです。千代さんの声が聞こえてきそうな感じで、語りかけられているようです。そして、出汁の使い方やちょっとした味付けのコツが、作る料理ごとに一言ずつ付け加えてお話しされています。命を吹き込まれたお料理なのだと、その細かな心遣いや気配りから直ぐに分かります。作ることが楽しくて、美味しいと褒めてもらうと嬉しいということと、独身でいる祐徳さんがいるから元気でやってこれたと。シンプルですが、この様に生きる生き方が、どれ程多くの人に伝播したか計り知れないと感じました。
このような形で、書籍として遺してもらって本当によかったです。貴重なお話しばかりです。「ブリキ男」のあとがきに、没して10年というのを最後に知って、この本が世に出てから翌年に亡くなられた計算になります。あとがきにこの言葉を書かれているというのも、生前、息子さんとの会話が屈託の無いユーモラスに満ちていた事を窺い知る事ができるでしょう。
この本の一番最初に出てくる「テケレツのオッパッパ」は千代さんが5歳の当時、叔母様が作ってくれたのを傍で見ていて覚えたというお料理で、カツ代さんが最初に訪問した時に千代さんが、「叔母の供養にもなるから」といって、作ってくれた豚肉と玉葱のフライです。なんて優しいのだろうかとうれし涙・・。
そう言えば、私の義母が亡くなって葬儀にみえた方へお礼に差し上げるのに、鯖の押し寿司120本を徹夜で作ったことを思い出しました。この際なので書いておきます。
私がお嫁に来た時、義母は脳血栓後の後遺症で、半身不随で寝たきりの状態でした。勿論言葉も出ませんでした。介助して車椅子に座らせ、食卓では賄ってあげての食事でした。6年後に亡くなり、当時義母が好きだった鯖の押し寿司、バッテラといいますね、これが好物で、親戚の方々も一緒に食したというお話しを聞いていました。ですから、供養になると私も思って作ったのです。

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そのことを思い出した時、千代さんがカツ代さんに作ってあげた気持ちが分かるような気がしました。故人にまつわる料理を人と囲んで頂く時というのは、つい最近の事のようにいろいろな記憶が溢れ出てきて、懐かしさの場面を思い出すものです。正にそれが供養になるという感覚、きっとそれだったのだと思います。今日は、私が千代さんの供養をしたいと思いましたので作りました。

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レシピには分量は書いてありませんので、こんな感じなのかなという見当でつくりました。千代さんのレシピで使われている肉はこま切れで、しかも小麦粉と卵がつなぎになっています。昔、母が、「食べるお米が手に入らなかった時は、水団(すいとん)にして、ちょっと誤魔化して食べていたのよ。だから、嫌がる人もいるけど私は小麦粉のこの感じが美味しいから好きだけど」などと言って、頻繁に雑炊で水団を作ってくれました。

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千代さんの叔母様は、安価な豚のこま切れ肉を使って、カツレツに見せかける工夫をされたのではないかと思います。だから、照れ隠しに「テケレツのオッパッパ」などと言う名前が当てられたのかもしれないと、ちょっと重なって思ってしまいました。明治の末期に銀座のレンガ亭でポークカツレツが流行ったことを誰だったか小説に書いていたのを覚えていますが、千代さんの叔母様は、ハイカラだったのですよ、きっと。

作り方
コマ切れ肉とタマネギは同量くらい。肉が多めでもよい。タマネギは半分に切って、それを筋にそう形で細切りにしていく。肉と合わせ、卵と粉を混ぜてあまりゆるゆるにしない程度にし(ベタベタとしたかんじ)、肉とタマネギを入れる。塩、胡椒で味付け。それにパン粉をつけて、なるべくペチャンコな形にし(揚げるとふくれるので・・・)フライにする。(抜粋)

このように、レシピには分量は全く書いてありませんので、全て勘に頼って作りました。ちょっと気を置いたのが、つなぎの小麦粉とそれを溶く水分量です。小麦粉をつなぎにするのに、卵が多いと生地に熱が加わった時さっくりした食感になります。これは卵の性質ですが、そんな風に思ったのであまりお水は多くしませんでした。気をつけたのはそれぐらいです。千代さん、これでよかったでしょうか。

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材料

  • 豚のこま切れ・・300g
  • 玉葱・・1個(250g)
  • 塩・・小さじ1
  • 胡椒・・適宜
  • パン粉・・適宜
  • 揚げ油・・適宜

つなぎ

  • 卵1個と水・・130cc(卵は68gの特大)
  • 小麦粉・・200g

作り方

  1. 玉葱は半分に切って、繊維に平行に5mm幅に切る。
  2. 豚のこま切れは、大きな場合はざく切りにする。
  3. 大き目のボールで卵を溶き、水を加えたら小麦粉を混ぜ合わせ、豚肉と玉葱、塩、胡椒を加えて混ぜ合わせる。
  4. 3を目安で8等分し、ボールに入れたパン粉に落としてパン粉をまぶしたら、手で押さえてぺちゃんこにして丸く形を整え、30分程冷蔵庫でねかしてパン粉を落ち着かせる。
  5. 揚げ油を180度にして、少しずつ揚げる♪

揚げ物の分量は、鍋の表面積の2/3以上にならないようにします。多いと温度が下がって油を吸ってしまうのでべちゃつきます。

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