2008-12-21

手羽中の黒砂糖煮(ウー・ウェン料理参考):死期を知っている人との会話で思うこと

 母の古くからの友人で、私が生まれた時から可愛がってもらっていたという方から電話を頂いた。最初の意識としては、一面識も無い知らない人という感覚だった。私が2~3歳の頃の話なので、一緒に写っている写真を見た記憶を錯覚して、覚えていると感じているのか、本当に当時の事を自分の感覚として覚えているのか、定かではないことだ。でも、話をして行く内に、その口調が、遠い記憶の中の何かと一致して行くようで不思議だった。母は、このおば様が癌を患っていて、余命幾ばくもないということを知り、何とか私とこのおば様に接点を持たせたかったに違いない。頼まれたからとは言え、手製のパンを私から送ったというのは、いいきっかけにはなったのだろう。母は大阪をちょくちょく訪ねて、何度か会っているらしく、その度に、私に会いたいと話していたそうだ。電話の向こうで、懐かしい当時の事を思い出しながら、弾んだ元気の良い様子だったが、実際は、骨粗鬆症(こつそそうしょう)で、体を支える為に背中の内部に板をいれていて、おまけに酸素ボンベを抱えていると。後から発覚した肺がんの手術もできずに、このまま生きながらえるしかない状態でいると話してくれた。悲惨な光景が浮かんだ。自力で外出できない上、人の手を借りてまで外に出たいとも思わないそうで、ずっと家の中だけで暮らしていると言う。私に会いたいと懇願され、私も大阪なら直ぐにも行かれる距離なので近いうちに行くと返事をして電話を切った。
 懐かしい気持ちはあるものの、幼児期の記憶と言うのは、当時の絵が浮かばないので、ぽっかり穴が空いたようなという表現は、このような事を言うのでしょうか。当時の話をどんなに聞いても、何も繋がらない空虚な感じなのです。仕方がないのですけどね。年明け早々にも、このおば様に会いに行こうかと直ぐに思ったのですが、おば様の言った言葉に少し引っ掛かっていて、「私もいつまで生きていられるか分からないからね」と。その時を迎える覚悟をしている様子と、80歳にもなれば、周囲も、大往生をとげたと送ってあげられるのですが、私に会って安心した途端に、あの世に召されてしまわれるのではないかと気になりました。会うのを楽しみにしていると言われたその言葉通りに、いつかいつかと、ずっと楽しみに生きていてよ、と思うのです。死期を知っている人が言う楽しみというのは、やり残しを埋めるということではないのか、などと余計な事を考えてしまうのです。会いたいという気持ちを電話で伝えられただけで、なんだかそれで勘弁してもらいたい気持ちです。あまりにも悲し過ぎます。

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 今日は、手羽中を黒砂糖で中華風に煮ました。どこが中華風なのかといいますと、葱と生姜を効かせて紹興酒を加えたという味付けと、黒砂糖と紹興酒、醤油が煮詰まった赤い色合いでしょうか。三枚肉で東坡肉(トンポーロウ)を作る時も、紹興酒と蜂蜜だけ(☛レシピへ)というのが大変美味しく、紹興酒が煮詰まるだけで中華の味付けになるものだと感心したところでした。
 今日は、手羽中なので、煮込んでもせいぜい、30分から1時間で表面の皮が透き通るほどにはなりますから、蜂蜜にかわって、黒砂糖の色と粘り気に紹興酒の組み合わせを思い立ちました。このような料理は中華のお師匠さんであるウーさんが作っているのではないかと、探してみたら、手持ちの本にやはり載っています。彼女の味付け方法なのか、中国料理がそうなのかは分かりませんが、表面に濃い味付けを先に、後から酒や水で煮込むのです。AmazonNetShopへ全体としては、味付けは濃く感じますが、実際の分量は、少なめだと思います。先日も、南瓜の単品で煮たものも、驚きのスピード料理だった割に、しっかりと味付けできました(☛参照)。お手本通りに何回か作ると、だんだんわかってくるもので、ウーさんの手の内が分かると、最近嬉しいです。
 加える調味料の分量をそのままやってみました。トンポーロウの味付けよりも濃い甘さですが、黒砂糖の風味と紹興酒の風味がどこか似ていて、そのものの感じです。しかも、手羽先の皮にその煮汁がしっかり絡んでますので、皮が美味しい。中国では、手羽中が一番高価な部位で、皮、肉、骨が一体になっていて、鶏肉の中で特に美味しいからだそうです。手羽中を煮物にするのは、その全てを一度に堪能できる方法だと思います。

材料

  • 手羽中(大)・・6本
  • 長葱・・10cm
  • 生姜・・5g
  • 黒砂糖・・大さじ2
  • 醤油・・大さじ2
  • 紹興酒・・大さじ1
  • 水・・1カップ
  • 茹でたほうれん草・・1束

 本書では、手羽中は8本とありますが、大変大きいので6本で同量とみなしています。また、茹でたほうれん草は本書にはありません。

作り方

  1. 長葱は半分に切り、生姜は薄くスライスする。
  2. ウー・ウェンパンに手羽中の皮目を下に並べ、中火にかけて両面を焼き色がつくまで焼く。
  3. 鍋の中央を空けて、黒砂糖を手羽中から出て来た油と一緒に炒め、香りが立って来たら手羽中に絡めるように炒め、醤油を注ぐ。
  4. 続けて紹興酒を加えて煮立ったら、長葱、生姜、水を加えて蓋をしてから煮立ったら弱火で煮込む。(約40分)
  5. 煮汁が鍋底に少し残る程度になったら火から下ろす。
  6. ほうれん草を茹でて水気を切り、手羽中の下に敷いて盛り付ける♪ 

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コメント

引っ越しと体調不良で外出(図書館までは無理) 大変で荷ほどき出来ず 食べたかった&さしいれしたかったのでレシピ大変 助かりますm(_ _)m ありがとうございました。
おばあ様とは無事 会えたのでしょうか?
では、本日は失礼しますm(_ _)m

投稿: やよい | 2010-10-05 14:11

やよいさん、引越しは大仕事ですね。体調不良等が重なると料理も困りものです。お役に立ててよかったです。長い夏の疲れでしょうか、ご自愛ください。

例のお婆様とは会えていませんが、まだご健在です。なかなか勇気がでないものですが、年内には行かれそうです。

投稿: ゴッドマー | 2010-10-05 15:50

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