蕎麦屋さんの蕎麦を自宅で「かけとろろ蕎麦」:おーまいがーな地鶏の出汁仕立て
私の住む市内で、かなり名前の通った蕎麦屋さんの手打ち蕎麦が、我が家に転がり込んできたのです。友人が仕事上の客人を自宅で接待するために、蕎麦屋さんに頼んでもらったのだと言うのです。釈迦力になって準備を急いでいる台所に顔を突っ込んでしまって、嬉しい事にお裾分けを頂いてしまったのです。
お持ち帰り用のお蕎麦を打ってくれるお店は少ないと思っていましたし、茹で方などに相当の技術が必要で、火力が弱過ぎて、茹でるお湯の温度に差がでたりすると、生のお蕎麦は切れてしまいます。家庭用の火力と私の力量で、本職さんの打ったお蕎麦が美味しく茹でられるとも思っていませんから、買ってくるという発想もありませんでした。いろいろ驚いてしまったのですが、ここは慎重に、真剣に茹でて、是非とも美味しいお蕎麦の一杯にありつけるようにと、先ずは、とびっきり美味しい出汁を取る事から始めました。
と、言ってもいつもの手順なのですが、迷いに迷ったのが、「つけ」にするか「かけ」にするかです。お蕎麦のコシと香りが手打ち蕎麦の醍醐味ですから、ここは「つけ」つまり、笊蕎麦にして、ツユをつけて食べるのが「通」の食べ方。食べ終わったツユに蕎麦湯(蕎麦を茹でたお湯)を注いで最後を締める。これが蕎麦通の食し方ですか。と、信じ込んでいるので、かけ蕎麦は邪道だと・・・あ、そう言えば、「一杯のかけそば」という栗 良平の短編小説がありましたね(☛Wikipedia)。いろいろな話題を呼んだ作品でしたが。とろろのかかったかけ蕎麦が大変好きなのも事実で、寒い日にはからだが温まっていいんですよね。お蕎麦にとってはどうよな話ですが、好きな食べ方が一番嬉しく美味しいのが、食の嗜好ということです。ただ、作り手にとっては、気を使います。硬めに茹でたそばを冷水で軽くしごくように洗って、温め直すお湯を用意し、更に熱い出汁を同時に用意するために、火元を3本必要とします。茹でこぼした後に、冷水で洗う場所の確保も必要です。こうなると、お蕎麦というのは、水との勝負のようですね。冷たいのと熱いのの繰り返しを常に手際よくできるようにするということのようです。
こうして頭の中でシュミレーションしたあと、キッチンを使いやすく整えていざ開始。
- 美味しい一番出汁を取ることからまずは、手始めとします。多めに出汁を取ると、あとあとの使い道にもなりますのでかなりたっぷりの水に昆布を浸けて、水出汁を作ります。最低1時間くらいか、半日も浸けておくといいです。そのまま火にかけて、沸騰する直前に昆布を取り出します。引き続き、花鰹か鰹の厚削りを適量加えて3分沸騰させて火を止めます。このまま冷ましてしっかり鰹の旨味を出します。鰹節を掬うか、別の鍋に上澄みだけを静かに流し出すなどして出汁を取ります。
- 擂ったとろろ芋を更に擂鉢で滑らかに、空気を含ませるようにして、ふんわりとさせておきます。
- 鶏のもも肉の余分な脂を取り除き、細かく切り刻みます。
- 葱は3cmにぶつ切りにしたら、縦方向に2~3回切って、短冊切りにします。
- 1.2リットルの出汁が完全に入る鍋に鶏肉を入れて火をつけ、中火でしばらく炒めます。
- 肉の色が変わったら、葱を加えてしんなりするまで炒めて、割り下大さじ2で味付けし、染み出した煮汁を煮詰め、鶏肉に濃い目の味をしみ込ませます。
- ここに、出汁を注ぎ入れて、沸騰直前になったら火を細めて熱い保温状態を保ちます。
- 6~7の作業と同時に、別の大なべに3リットル以上のお湯を沸かします。蕎麦を茹でる最低のお湯量は、一人前に付き1リットルが最低の湯量です。そして、麺は一人前ずつ茹でます。これは家庭用のガス台や電気の熱源の火加減の限界かと思います。
- 蕎麦を温めるためのお湯を別の鍋に沸かしておきます。
- ボールにお湯を注いで、どんぶりを温めておきます。
- 流しに、大きなボールなどに水を張って、笊を用意します。諏訪の水は大変冷たく、井戸水のように夏場は冷たく冬場は生暖かく感じます。場合によっては、氷を浮かべてもいいかもしれません。茹で上がった蕎麦のぬめりを取って、蕎麦独特のしこしこした食感にするためには、この水が物を言います。小川の軟らかい水などで洗うと、甘くて美味しいお蕎麦になるのですけどね。
- 充分お湯が沸騰したら一人前の蕎麦をつかんで、軽くぱらっとお湯に放ちます。蕎麦がお湯のたぎり渦と一緒にぐるんぐるんします。この状態で1分20秒茹でて笊で引き上げ、直ぐに冷水に当てながら手際よく洗って、熱を取ります。
- 蕎麦を温めるための鍋のお湯にジャブンと5秒浸けて、水気をよく切り、温めておいたどんぶりに移し、擂ったとろろ芋、青物茹でたほうれん草)を乗せてから、出汁をかけ回します。
- これで熱々で、しこしこのとろろかけ蕎麦の出来上がり♪
- 短い時間に目一杯忙しい思いをするのですが、大変美味しいお蕎麦を頂きました。ご馳走様でした。
材料
- 手打ち生蕎麦(更級蕎麦)・・4人前
- 茹でたほうれん草・・適宜
- 長葱・・1本
- 地鶏もも肉・・1枚(300g)
- 割り下・・大さじ2(☛レシピへ)
- 焼き海苔の細切り・・適宜
かけ汁の材料
- 一番出汁・・1.2リットル
- 割り下・・大さじ4
- 塩・・小さじ2
(※一番出汁の本格的な取り方☛レシピへ。でも、上記の方法と出来上がりに大差がありませーん。)
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コメント
ゴッドマー様、おはようございます。
とっても美味しそうですね。鰹ダシの香りがこちらまで漂ってきそうです。
確かに自宅で完璧な蕎麦を作るのは、茹でるのだけでも大変な作業だと想像しますよ。でも、脳内で順序良く整理すると、私にもできそうな気がしてくるのが不思議です。
正に、ゴッドマザーマジックですね。
ああ、本場の信州蕎麦が食べてみたいです。
投稿: るる | 2008-10-15 10:00
るるさん、こんばんは。
おっほん、腕自慢よりも、まずは本職の方のお蕎麦に感激です。失礼のないように、慎重且つ、丁寧に茹でたらこんな内容になってしまって・・・。
料理はもはや、遊びと化していますので、かえってお付き合い頂いて恐縮です。
是非、信州にもお越しください。案内するほど詳しいわけでもないですけど、お蕎麦ならきっと美味しいお店に繰り出せると思いますよ。
投稿: ゴッドマー | 2008-10-15 20:34