2008-07-13

乾物の煮物の勘所:ずいき(芋がら)の煮方から

 岐阜の友人が話してくれたことで、「赤ずいき」は食べるけど、青いずいきは食べないのだとか。そうなんだあと鵜呑みにしていたら、なんと東北には緑色のずいきが存在しています。赤よりも緑のずいきの方が目に飛び込んできます。これはどういうことなのでしょうか、単に地方的にそういうものだと定着しているというだけなのか。確かに日本という国は(だけではないと思いますが)、卵などの食べ方にしても、味噌汁に入れる習慣が無い土地で、「韮と溶き卵の味噌汁は美味しい」などと言ったために顰蹙(ひんしゅく)を買ったお話が現に私にあります。ですからうっかり言ってしまって、揉め事の元になるのも薮蛇というものです。が、食べたことの無い人にとっては、対象が何であろうと「食べないもの」だという観念的な捉え方がしっかりあるという事です。私もこの歳になって日本を縦断するような所用に恵まれ、お陰でその土地のものをターゲットに食べ歩く機会に恵まれています。何度か訪れた土地でも私が知り得ることは極浅い部分だということが分かっているので、その不足分でしょうか、食を通して日本の歴史や背景にどんどん興味をそそられていきます。またその土地に戻りたくなってしまうのです。これこそ時間の無駄的な顰蹙を買いそうな、今の世代には理解できない発想であったりするのかもしれませんね。確かに、そうやって旅をして、なんぼか私が満足したとしても、何の役にも立たない浪費にしか過ぎないと言われそうなことです。その無駄こそが、宝だったり、豊かさだったりするという感性は伝えようもないです。確かに。
 ずいきの話しに戻しますが、八つ頭や里芋の根元から葉の直ぐ下の部分までの茎を乾燥させてカラカラに干して保存した物の色が赤か緑かの問題ではなく、東北では緑のずいきを食べると。そして、それは、料理する時に水やお湯で戻します。これも赤いずいきと同じです。繊維質なわりに固さや筋ばった食感は無く、食べ始めると間違いなく癖になってしまいます。食べてみても、全く両者は同じなのです。食べないという土地に対する不思議さを残したままですが、庭先の椎茸の榾木(ほだき)から取れた椎茸をスライスして乾燥させた手製の干し椎茸と油揚げで一緒に煮付けました。超田舎料理ですが、私はこういう田舎料理も大好きです。20070925040854
 ずいきを水で戻してしごいてよく洗ってから3~4cmにぶつ切りにして、同じく戻した椎茸と油揚げを一緒に鰹出汁で煮ます。長く煮過ぎてしまうとずいきの食感が残りませんので、火が通る程度にします。出来上がりをどう画くかによって出汁の分量も変わります。ひたひたと煮汁を残したい場合は、出汁を多く使っても構いませんが、その分味付けの調味料も多くなります。煮汁も頂いて楽しもうと思ったら、その味付けも程々にしておかないと、「喉が渇いて死にそうだ」という童話の台詞になります。さて、どうしたものか。ですね。
 今回は、出来上がったら煮汁も殆ど煮詰まってしまうような感じに仕上げました。さあ、このレシピの表現が非常に難しいです。他の料理とは違って、勘で加減して作っていますからその勘所を書く難しさを思うと、こんなレシピわざわざエントリーしなくてもいいのではないか。などと逃げる口実を見つけたくなります。
 P7120005
 何が勘所かと言いますと、出汁の加え方と、加えてしばらくしてからずいきが吸い取った時の汁加減です。その見た目でしょうか。乾物を煮る時はそこが勘所です。「ひたひた」という表現を使いますが、それは、出汁に具が浮いている状態ではなく、なべ底に具があって、出汁の表面からその具が2~3割見えている程度を言います。どちらかというとびちゃびちゃした感じです。このひたひた加減に出汁を加えてずいきを煮詰めると、これはずいきが煮溶かされてしまいます。つまり出汁が多過ぎです。このひたひた加減の半分くらいの出汁が、ベストです。しかしながら、初めからその分量ですと、加熱後2分で鍋から出汁が見えなくなります。ずいきを戻した時の水分を絞っていますから、見事にあっという間に吸い取ってしまいます。この状態でもできなくはありませんが、火がとおりにくくなるので結果として長く煮る羽目になり、しかも水分が少ないので固い筋張った仕上がりになって失敗します。さあ、ここですよ。最初、見た目がひたひたでも、2分後は、P7120004 なべ底に出汁が見える程度の出汁の適量というのが勘所です。ここを見つけてしまえば、後は味付けです。ずいきに火が通って、好みの柔らかさまで煮込んでから、加えては味見という風に加減します。私の場合は中火で蒸気を抜きながら10分でした。こういう味付けの時に大変便利なのが割り下です。私の作る割り下は、甘過ぎず、辛過ぎずの塩梅になっていますので、これをチョコチョコ入れながら味付けします(☛レシピ)。お醤油や酒、味醂、砂糖などの調味料をまわりに散らかさないし、蓋の開け閉め、棚から取り出す手間は全て省けます。
 今日のお話は、乾物の煮方の勘所でした。ずいきでなくても切り干し大根やひじき、高野豆腐など乾物を煮る時に、思い出して頂くと嬉しいです。

材料

  • 乾燥ずいき(芋がら)・・30g
  • スライスの干し椎茸・・40g
  • 油揚げ(うす揚げ)・・1枚
  • 鰹出汁・・適宜
  • 割り下・・適宜(☛レシピ

作り方

  1. 芋がらと干し椎茸はそれぞれ別の容器で水で戻す。
  2. 芋がらはしごいて汚れを洗い流し、水気をよく絞ってから3~4cmのぶつ切りにする。
  3. 椎茸も同様に水気をよく絞る。
  4. 油揚げは湯通しして余分な油を流してから5mm幅の短冊に切る。
  5. 鍋に2、3、4の芋がら、椎茸、油揚げと多過ぎないひたひた加減で鰹出汁を加えて中火にかける。
  6. ずいきの戻り具合と出汁の分量を加減したら半蓋にして中火で5~6分材料に火を通す。
  7. 味付けの割り下を、最初は少なめに大さじ2~3加え、味見をしながら好みの加減に仕上げる。
  8. 煮汁も少なくなるので、味が濃くなることを計算に入れて煮詰めて出来上がり♪  

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コメント

奥さんの福島の実家から芋がらを送られて来ました、もしやと思って探してみたらレシピを発見、参考にさせていただきます!

投稿: yamaaka | 2010-01-17 21:32

yamaaka さん、見つかって嬉しいです。美味しくできるとよいのですけど、水加減が難しいかもしれないので、そこのところよろしくね。

奥様のご実家が福島だなんていいですね。芋茎は見た目はアレな感じですけど、出汁を美味しく取ると最初に味がしみ込みやすくなります。下味のような感じなります。

投稿: ゴッドマー | 2010-01-18 04:42

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