先日Twitterでも垂れ流していましたが、揚げ物の衣のベストについて、いろいろと調べ物などをしていました。大真面目に天ぷらのサクサク感について各種デンプンの実験をし、その研究報告を公開している研究者がいるのを見つけて驚いた次第でした。それが今やネットで、無料で閲覧できることも素晴らしい。この時代に生きていることは、無限にその恩恵を受けられるのだと、改めて研究者の努力に感謝します。
さて、「天ぷらや唐揚げに使う衣の粉はサクサク、カリカリが良いに決まっていて、そうなるには、小麦粉を冷たい水で溶いて使うのが良い」という、慣習的に、言われたとおりに何も考えずに料理することは間違いではないけど、応用が効かないのです。なぜ、小麦粉なのか?本当に小麦粉がベストなのか?他の粉で試したこともないのに、言われた通り、みんなが良いと言っている方法が良いのか?と言う疑問を解いていこうと思いました。とは言え竹田靖史(たけだ やすひと)さんの研究結果がしっかりあるので、再現すると言うか、自分の実験の結果が今日の料理紹介になりました。
まず、ご参考までに、研究者の結果をべったり貼り付けます。
最もよいサクサ ク感を与えたのがトウモ ロコシと,サクサク感が劣ったジャガイモの衣の中での澱粉粒の形状を走査型顕微鏡で観察した。サクサク感を与える衣では,澱粉粒の形状がほぼ保たれているのに対して,サクサク感のない衣では,澱粉粒の形状が完全に失われていることがわかった。そこで,澱粉を予め湿熱処理して衣に使うと,ジャガイモ澱粉でもサクサク感が大幅に増加し,澱粉粒の形状がほぼ保たれていた。湿熱処理は澱粉分子に強い結合をつくって,澱粉粒の崩壊を抑制することによる。また,サクサク感をあたえる衣の中のアミロー スは糊化が十分ではないが,サクサク感の劣る衣のではよく糊化されていることもわかった。 アミロースが澱粉粒の崩壊や糊化をコントロールし,サクサク感を左右しているのである。
このように,澱粉がてんぷらの衣のサクサク感の発現に大きく影響していることを,初めて知ることができた。
このアミロースと言う物質は、リンク元の報告書の前段に記述がある通り、インディカ種とジャポニカ種の米の粘りの比較実験で証明されている通りで、天ぷらを揚げた後の衣にアミロースの糊化がどの程度見られるかによって、サクサク感に影響を与えている。アミロースが壊れてしまった衣は、べっちゃとして、衣に粘度が加わることで糊化してしまったと言える。
また、「湿熱処理」と言う新しい言葉が飛び出してきたので、これも調べると、いろいろな方法があることが分析結果として見つかった。そして、この実験を知らずに、自分であみ出した方法の立証にもなりました。ちなみにその方法とは、サツマイモ澱粉をオーブンシートに薄っすらと撒き、その上から霧吹きで水を散らすと、澱粉の小さな粒になります。そのまま自然乾燥させて唐揚げの衣に使ったところ、これが非常にカリカリとした食感を生み出すのです。ですから、実験結果に納得できた次第です。よく考えると、鏡餅の揚げあられやおせんべいなどもそうです。中国の揚げたおせんべいも同様に、水で加工した米粉や小麦粉を乾燥させたものに火を入れると、カリカリになるのです。ギリシャのクスクスも、上記の方法で作られています。
実験的にですが、竹田さんの実験にある通り、トウモロコシ澱粉と小麦粉を半々に混ぜた衣と、小麦粉だけの天ぷら粉で揚げたエビの食感を比較すると、揚げた直後は、どちらもサクサクした食感はあるものの、トウモロコシの方がゴワゴワした硬さでした。しかも、小麦粉だけの衣との違いは、翌朝になってもカリッとしていた点でした。小麦粉だけの衣なら、揚げたてを食べるのに最適ですが、お弁当などにはトウモロコシの衣がおすすめです。
これまでのことで結論として言えるのは、穀類澱粉は、揚げ物に一番適していて、サクサクした食感を長持ちさせるために、湿熱処理された根茎類澱粉を混ぜることで、サクサクの食感がより軽くなるということです。また、唐揚げなどでは、下味をつけた肉に片栗粉をまぶして揚げますが、粉っぽさが残っていないほうがよりサクサクした食感が生み出せる理由は、下味の水分を吸った片栗粉は、揚げる時の水分の飛散率を高めるからだと言えそうです。
そしてダメ押し的に自分の経験から加えると、唐揚げのように、下味つけ液に漬け込んで揚げる場合は、卵白を下味の具材に混ぜてから粉を混ぜると、卵白それ自体が揚げるとカリカリになるタンパク質のため、さらにカリカリとした軽い食感が生み出せるとことです。今日のレシピは、これらのことを踏まえて生まれました。
本題に入ります。
一見、普通の唐揚げみたいですが、下味の材料は一般的な家庭料理とは言えないらしいので困りもの。私としては、日常の料理です。まず、アンチョビーソースが、入手困難です。品揃えの良いスーパーなら、アンチョビーベーストとして、チューブ入りがあります。それでも良いです。画像の瓶入りのソース状のは、カルディで見つけました。このアンチョビーソースは、私にとってはオイスターソースと並んで、万能的な存在です。それもなかったら、瓶詰めのアンチョビーを買ってきて、すり鉢でペースト状にすると代用できます。次に、レモンの塩漬けです。インドやモロッコ、アフリカなどの家庭で、自家製の調味料といった使い方をしています。画像のは、冷蔵庫で3週間ほど寝かしたものですが、もっと漬け込んでおくとレモンが発酵して色味がクリーム色になり、ベタッとした状態になります。この状態がベストで、塩辛さもマイルドになり、レモンの酸味も角が取れて非常に味わい深くなります。発酵食品とし、肉を柔らかくする効果もあります。鶏肉のソテーや、豚肉などの下地付けに最高です。そして、アンチョビーソースと塩レモンにニンニクという3強の香りが一緒になると、これがもう、唐揚げだけで鱈腹になってしまうほど大食いしてしまいます。そして、「この味付どうやったの?」と、必ず聞かれます。まあ、美味しいこと間違いないので、ゆっくりレモンでも塩漬けするなどから始めてみてください。
画像の唐揚げのトッピングは、フレッシュバジルの素揚げで、実は、油を中火にかけてから3分後ほどにカラッとなるまで低温で揚げます。この時のバジルの香りが部屋中に広がり、換気扇の外からは、通行人の「いい匂い」と言う声が聞こえてきます。この香りが、唐揚げの油に移るのもそうですが、エキゾチックな鶏の下味とこのバジルの素揚げがベストマッチなのです。一口運ぶ時に、バジルの葉も添えて食べてみてください。ある意味感動的で、バジルが大好きになるんじゃないかと想像します。
ところで、11月にもなってフレッシュバジルがなぜ我が家にあるか、なんですが、夏に育ったバジルは9月頃まで畑から収穫できますが、その後はどんどん枯れてしまいます。その前の全盛期に良い枝を切り取って花瓶に挿しておくと、切り口から根が生えてきて、どんどん成長し、花が咲くようになります。花も揚げて一緒に食べますが、シソ科の植物なので、わりと温度には弱く、ギリギリ、いつまで食べられるのか、これも実験しています。
今回の唐揚げは、二度揚げで、カリカリとした食感の実現をしました。一度目は低温で、鶏肉の表面の色が変わる程度まで揚げて引き上げ、二度目は170℃くらいの温度で、カラッとなるまで揚げています。気泡が静かになって、音も静かになれば揚げ上がりです。
材料(鶏モモ肉二枚分約700g)
・鶏モモ肉・・・2枚(約700g)
・フレッシュバジル・・・1本
下味材料
・アンチョビーソース・・・大さじ2
・ニンニクすりおろし・・・2片
・レモンの塩漬けみじん切り・・・半個分
・塩と胡椒・・・適宜
・卵白・・・1個分
衣
・トウモロコシ粉+小麦粉・・・各大さじ2
作り方
1.鶏肉の余分な油などを掃除して、小さめの一口大に切りそろえる。
2.卵白以外の下味材料をボールで合わせ、1の鶏肉を混ぜ合わせて最低、1時間漬け込む(一昼夜でも良い)
3.衣をボールで混ぜ合わせておく。
4.卵白を2の味付き鶏肉に混ぜ込む。
5.揚げ油を中火にかけ、3分後にバジルの葉をからっとなるまでゆっくり揚げて、油を切っておく。
6.3の衣ミックスを4の鶏肉に混ぜ込み、粉っぽさがなくなったら鍋の表面積の3分の2ずつ揚げる。(油の温度は100℃~140℃)7.油の温度を170℃まで上げ、6の鶏肉の仕上げ揚げをする。
8.皿に盛り付け、バジルの葉を散らして出来上がり♫
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